性能評価グループ

【ミッション】

 性能評価グループは、原子力発電で生じる放射性廃棄物が将来にわたって長期間安全に管理されることを目指し、廃棄物ごとの処分概念及び処分場全体の構成に応じた処分場の性能評価、またそれを基にした安全評価を行っています。

 放射性廃棄物は原子力発電所が稼働する限り発生しますが、人間の生活環境に影響を与えないよう、その放射能レベルが十分に低下するまで長期間にわたって処分場の地下に閉じ込めて処分されます。性能評価グループは、処分場から流出する放射性物質の評価に従事し、処分場が人間の管理を離れても(処分場が閉鎖されても)十分安全であるという閉鎖後長期安全性を保証できるよう、処分場の性能を評価・検討しています。これらの評価は、放射性廃棄物内に存在する放射性物質の移動を廃棄物の性質、処分場の地質等から数理的にモデル化した解析を用い、閉じ込めの性能と生活圏に与える影響を定量化して行われています。

 放射性廃棄物は地中に埋設され処分されますが、放射線の強さによる区分付け(※)がレベルでなされており、放射線レベルに応じて異なる処分方策が適用されます。これらの放射線レベルに応じた処分の考え方はIAEAの安全原則(SF-1)に基づいており、日本原子力学会標準委員会で提示された処分の基本的な考え方(原子力学会標準)及び原子力発電環境整備機構(NUMO)による包括的技術報告:わが国における安全な地層処分の実現(NUMO-SC)等によって個別の処分方策が策定されています。廃棄物の処分の検討は、これらの原則と方針に従い、安全性を保つことを優先になされています。

※ 原子力発電所で生じる廃棄物は、放射能レベルに応じて浅地処分(地中に埋設するトレンチ処分またはコンクリートピットで埋設するピット処分)、70m以深に埋設する中深度処分、ガラス固化して地下300m以深に埋設する地層処分等の方法で処分されます。これ以外にも地層処分に変わるガラス固化処理を行わない処分(直接処分)等の代替処分オプションの検討も行われています。

 福島第一発電所事故で発生したがれきをはじめとした事故廃棄物に対しても、同様の放射能レベルの区分とそれに応じた処分に向けた検討を行っています。


【取り扱う問題の種類とそのソリューション】

 処分の形態にかかわらず、廃棄物処分の安全性評価は、各処分概念の根拠となるガイドライン(原子力学会標準、NUMO-SC等)に即して放射性核種の移行をモデル化し、長期間・大域的な移動を追跡するモデルを作成し、それを用いて安全性を評価しています。評価では主に汎用解析ソフトウェア・GoldSim内で各処分方法を一次元非線形の核種移行モデルを構築し、解析を行っています。このモデルでは地下水を通じた核種移行を追跡することによる人間生活圏への影響、処分場上部の土地を利用することを仮定した場合の人間生活圏への移行等を評価し、被ばく線量を定量的に評価しています。

中深度処分概念図


中深度処分概念のGoldSim内部処理フロー図

 例として地下水を媒介に中深度処分された放射性廃棄物から放射性核種の移行を評価する場合では、図に示す廃棄体の想定形状をもとに、廃棄体中の放射性核種が各バリア層(充填層、低拡散層、ベントナイト層、天然バリア)を移動する一次元の物質移動モデルとして再現します。これにそれぞれのバリア層の性質、核種の性質等をパラメータによって指定し、どのように移行し、地下水へ流出していくのかを解析します。

中深度処分時の地下水移行シナリオGoldSim処理概略図

中深度処分時のGoldSim内処理詳細図

 GoldSimによる評価モデルは大域的・長期間の核種移行モデルであり、ここに数値解析グループが検討した核種移行を三次元的に追跡する微視的な解析結果を巨視的なパラメータに変換してGoldSimへ適用することで、核種移行の複雑な現象を適切に再現することが可能です。

解析条件入力テーブルの一例

 移行解析に用いられるパラメータは多岐にわたるため、それらのパラメータが計算時に適切に設定され、得られるデータが信頼のおけるものであることを確認するため、既往の特定条件における核種移行数理モデルとの比較や、入力パラメータの包括的な数値チェックを通じて、計算結果の信頼性を担保しています。


【近年の代表的な成果】

 地層処分に代わる処分案の一つである直接処分は、発熱影響の低減やプルトニウムの臨界防止等に重点が置かれており、使用済燃料の再処理及びガラス固化を行わない処分概念です。その処分概念を用いた場合に閉鎖後長期安全性が適切に確保され得るかという検証は、処分システムとして成立し得るかを検討する上で重要になります。
 性能評価グループは、この検討に携わり、安全性を確保し得るかについて、複数の条件を想定したケーススタディを行い閉鎖後長期安全性について定量的な知見を提供しています。

直接処分時の海洋漁業従事者線量解析例

 

 

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