感度解析と不確実性解析
感度解析
放射性廃棄物処分の安全評価は,対象とする時間と空間のスケールが大きいということもあって,様々な不確実性を含んでいます。安全評価に用いられるパラメータについても,関連する特
性の空間的変動性や時間的変化によって,また,実験室や自然システムでの観察結果をそうした系での時間空間スケールから処分の時間空間スケールへ外挿することに起因して,不確実性が生じます。不確実性を持つパラメータの変動が解析結果に及ぼす影響の度合いを把握するために,さまざまな感度解析手法が用いられます。複数のパラメータの重要度を把握することにより,精度向上させるべきデータや詳細に評価すべき現象などを特定するための補助となります。さらには,システムの挙動を大局的に把握したり,システムの不確実性解析の実施にも繋がります。他方で,工学的システムの最適なデザインを導き出すことにも感度解析が用いられます。
QJサイエンスでは,これらの感度解析手法を放射性廃棄物処分の安全評価に適用し,システムの挙動の把握や不確実性解析,設計の最適化などに役立てています。また,目的や用途に応じた独自の手法やツールを開発することにより,感度解析手法のさらなる高度化に取り組んでいます。
ハイブリッド不確実性解析
将来予測や様々な推論には多かれ少なかれ不確実性が含まれ,結果を一通りに言い当てることができるのは極めて稀です。このような不確実性には,現象自体がランダムに起きるために(例えばサイコロの出目のように)結果が確定しないこと(randomnessあるいはvariability)と,私たちの知識が限られているために(たとえ結果は確定しているとしても)言い当てることができないこと(ignorance),という二つの全く異なる要因があります。そして,これらの二つの不確実性要因に適した解析手法も異なり,randomnessには古典的な確率論を用いることができますが,ignoranceにはファジー理論やpossibility理論あるいは主観確率といった我々の認識を数量化する手法が必要です。ハイブリッド不確実性解析は,ほとんどの現実的な問題で混ざり合って存在しているrandomnessとignoranceについて確率論とファジー理論あるいはpossibility理論といった認識論的な手法を組み合わせることによって同時に取り扱うことのできる新しいアプローチです。
QJサイエンスは,ハイブリッド不確実性解析手法を,地層中放射性核種移行・汚染物質移行解析に組み込み,高レベル放射性廃棄物地層処分の長期安全性に関する不確実性解析,あるいは天然事象の影響を考慮した地層処分のリスク評価を行っています。
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