地球化学解析
地球化学は、地球における岩石や地下水などの化学反応による長期的な変化や、化学物質やエネルギーの移動を取り扱う自然科学の一分野です。地球化学の知見は、地質学、鉱物学、環境学といった分野で活かされていますが、放射性廃棄物の地層処分についての安全評価においても、基盤的な知見として活用されています。
QJサイエンスの取り組み
QJサイエンスでは、地層処分施設の長期的な変遷シミュレーションにおいて地球化学モデルを適用し、緩衝材等に人工バリアとして使用されているベントナイトが周囲の鉄やコンクリートといった材料と地下水を介してどのような反応をし、どのように変質・劣化していくか予測することで、処分施設の長期健全性などの評価をしています。また、通常の実験の時間スケールを超えて地球化学モデルを長期的な予測に適用することの妥当性を確認するために、自然界における類似現象にも着目して解析を行っています(ナチュラルアナログ)。例えば、アルカリ塩湖という特殊な環境下にある湖での粘土堆積物の変質は、処分場でコンクリートと接したベントナイトの変質に類似したものと考えられます。そこで、安全評価のために開発した地球化学モデルをこのような自然現象に対して適用し、実際のサンプリングデータと比較検討することで、地層処分施設で起こるコンクリートとベントナイトとの相互作用についてのモデルの検証に役立てています。
人工バリア長期性能評価
地中に埋設された高レベル放射性廃棄物は、周囲の環境への放射性核種の漏出(核種移行)を制限するために、鉄やベントナイト等からなる人工バリアで囲まれています。緩衝材の重要な機能の1つに止水性が挙げられますが,時間の経過と共に、岩盤の割れ目に沿って地下水がコンクリートや緩衝材へ浸潤し、地下水に溶解している化学物質や、人工バリアの材料であるコンクリートや鉄とベントナイトが相互作用し、ベントナイトが変質していくと、この止水性が低下あるいは失われる可能性を検討する必要があります。
QJサイエンスでは、汎用のモデル開発環境であるQPACにより処分施設及び人工バリアの長期変質についての地球化学モデルを作成し、人工バリアの長期性能評価を行っています。
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